先日、新緑の室生寺へ行ってきた。
なんて清々しい!なんて気持ちの良い空気!
5月晴れの恵まれた天候と室生寺の境内の美しい緑が相まって最高な空間になっていた。
10年ぶりに訪れた室生寺。そう、あれは忘れもしない極寒の大晦日の日、私は埼玉から一人旅でここへやって来ていた。その当時とある役者の卵に恋をしており、室生寺の奥の院まで行って(700段もある階段を上って)その彼の為にお守りを買ったのだ。
何故か頼んでもいないのにわざわざお寺の方がお守りにご朱印の様なものを書いてくださった。私はなんだかそれがすごく効果がありそうな気がして、もしかしたら恋が実るかもなんて淡い期待をしていた。
埼玉へ帰り、その彼と池袋で会う約束を取り付け居酒屋で落ち合った。室生寺のお守りを渡すと彼は喜んでくれた。そのやり取りをカウンターの向こう側で見ていた威勢の良い店員さんが「すごくいいお土産だ!彼も喜んでる、良かったね彼女!」みたいな事を言ってきて、いや、彼女じゃないし!と否定はしなかったけど、余計なこと言うんじゃないよ!と心の中で思った。
後日、フラれた。ほらね、余計な事言うからだよ、あーぁ。まぁ、店員さんのせいじゃないからね。私に足りないものがあったんでしょうよ、そもそも求められていなかったのね。彼はアメリカへと旅立っていった…。
そんな苦い思い出の地であった室生寺。きっとそれがあったから奈良に越して来ても訪れ辛かったのかもしれない。
でも今回は違う!仏像好きの友達数人とワイワイ大人の遠足気分でやって来たのだ!
あの時とは別ものに見える景色。もちろん真冬と五月晴れは大きな差があるがそれにしても気持ちよすぎる境内(真冬はそれはそれで良かった)
金堂でもう二度と拝める事の出来ない仏さま達のそろい踏みを見て、感動と寂しさで涙しそうになった。
文化財の保護の為新しく出来る宝物殿に移動される仏さま、金堂に残る仏さま。離れ離れになってもずっと友達だよ…なんて勝手に妄想して切なくなった。
奥の院どうする?行く?と誰かが言った。どっちでも良かったけど、折角室生寺まで来たのだからと700段の階段を上って奥の院まで来た。
あぁ、ここでお守り買ったんやなぁ、フラれたんやなぁ。また思い出す。
賽銭を入れて手を合わせた。
「10年前はありがとうございました。フラれました。でもそれがあったからこそ奈良に来る事が出来たし、結婚して子どももいて幸せです、ありがとうございます」と心の中で呟いた。
奥の院で仏下を撮ろう!ということになった。誰が言った訳でもなく皆仏下を当たり前のように履いてきてくれて私はもうそれだけで胸がいっぱいだった。それを全員揃って撮ろう!なんて嬉しい事!
奥の院の木のベンチに座ってカメラマン(仏友さん男性)に撮ってもらった。
ワイワイキャピキャピ、大の大人が楽しそうに仏下を見て喜んでる!履いて、撮って、楽しんでる!それを間近で見た私は感動と感謝の気持ちでたまらなくなった。
仏下をこんなに楽しんでくれている。靴下というアイテムが誰かを幸せにしてる。嬉しい、作って良かった。今まで生きてきて良かった…大げさだけどそのくらい嬉しかった。
晴れの室生寺、仏下の宴。過去のフラれた思い出が綺麗に浄化されたようだった。
室生寺はフラれた思い出から仏下の思い出へと変わった。
四天王気分が味わえる?!邪鬼を踏める靴下
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